Kitcast(キットキャスト)は、米国の会社が提供しているクラウド型のサイネージCMSです。いちばんの特徴は、Apple TV でサイネージをするために作られてきたことです。お店や会社で「Apple 製品でそろえたい」「Apple TV をテレビにつないで案内を流したい」と考えたとき、まず名前が挙がるサービスです。
この記事では、Kitcast の公式サイトに書かれている内容をもとに、ほかのCMSと何が違うのか、料金はいくらか、どんな人に向いているのかをまとめました。編集部が実際に使って評価した記事ではなく、公式情報を調べて整理したガイドです。
ひとことで言うと
Kitcast をひとことで言うと、**「Apple TV・Mac mini・iPad をサイネージの再生機として使うのが得意なCMS」**です。
- 公式サイトによると、2015年10月から Apple TV(tvOS)向けのアプリを提供しており、「tvOS の App Store で最初のサイネージアプリ」と説明しています
- Apple 製品をまとめて管理する仕組み(MDM)に対応していて、たくさんの Apple TV を一度に設定できます
- Apple 以外にも、Fire TV・Android・Samsung や LG の業務用ディスプレイ・BrightSign などに対応しています
- 料金は1画面あたり月 $7(年払い) から。管理画面は英語です
「Apple TV でサイネージ」と検索してたどり着く人にとって、最初に検討したいCMSといえます。Apple TV を使う方法そのものはApple TVでサイネージを始める方法でもくわしく紹介しています。
他のCMSと違うところ
海外のサイネージCMSは数多くありますが、Kitcast にははっきりした「得意分野」があります。ここがこの記事でいちばん大事な部分です。
1. Apple TV に「本気で」対応しているほぼ唯一の選択肢
多くのサイネージCMSは、Fire TV Stick や Android の端末、Windows のパソコンを再生機として想定しています。Apple TV に対応していないCMSも珍しくありません。編集部が調べた主な海外CMSの中で、Apple TV に専用アプリで対応していたのは Kitcast だけでした(サイネージCMSの比較表を参照)。
公式サイトでは、Apple TV HD(第4世代)とすべての Apple TV 4K に対応し、4K の表示や画面の分割をするなら Apple TV 4K(2022年以降のモデル) をすすめています。Apple TV 4K は家電店でも買える身近な端末なので、「専用のプレーヤーを海外から取り寄せる」必要がないのも安心な点です。
2. MDM で何十台もの Apple TV をまとめて設定できる
会社や学校で Apple 製品をたくさん使っている場合、**MDM(モバイル端末管理)**という仕組みで、端末の設定やアプリの配布をまとめて行っていることがあります。Kitcast はこの MDM に対応しています。
公式サイトによると、Jamf Pro・Mosyle・Kandji・Meraki・Workspace ONE・Hexnode などの MDM と、Apple Business Manager を組み合わせることで、
- 新しい Apple TV をネットにつなぐだけで、自動で管理の対象に入る
- Kitcast のアプリを自動で入れる
- Kitcast 以外の画面に切り替えられないようにする(シングルアプリモード)
- 遠くから再起動やアップデートをする
といったことができます。店舗が多いチェーンや、教室ごとに画面がある学校では、1台ずつ設定しに行かなくてよいのは大きな違いです。なお MDM 連携は Pro プラン以上の機能として書かれています。
3. Apple TV なら「サイネージ」と「画面共有」を1台で
Apple TV には、iPhone や Mac の画面をテレビに映す AirPlay という機能があります。公式サイトでは、ふだんはサイネージを流し、会議や授業のときは AirPlay で資料を映す、という「1台で2役」の使い方を紹介しています。会議室や教室では便利なポイントです。
4. Mac mini・iPad も再生機にできる
Apple TV だけでなく、Mac mini や iPad も再生機として使えます。すでに社内にある Mac をサイネージに回したい、受付に iPad を置いて案内を出したい、といった使い方にも合います(Mac mini・iPad)。
5. AI アシスタントから操作できる「Kitcast MCP」
公式サイトのトップページでは、Kitcast MCP という仕組みも紹介されています。ChatGPT や Claude、Gemini などの AI アシスタントから、コンテンツ作り・プレイリスト作成・スケジュール設定ができ、変更は履歴として残り、元に戻せると説明されています。どのプランで使えるかは、公式サイトでは確認できませんでした。
注意したい違い
反対に、Windows・Linux・Raspberry Pi の専用アプリはまだありません。Kitcast 自身の比較ページでは、これらは「今後対応予定」として書かれています。Windows のパソコンは、ブラウザで表示する方法になります。また、公式サイトではタッチ操作の画面(キオスク)には向かないことも正直に書かれています。
主な機能
公式サイトの機能紹介と料金ページから、主な機能をまとめます。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| 表示できるもの | 画像・動画・音声・PDF、Webページ、ライブ配信 |
| テンプレート | 500以上(メニューボード、緊急のお知らせ、学校向けなど18分類) |
| スケジュール | 時間帯で自動で切り替え、複数の画面で同期 |
| 画面の分割 | 1つの画面を区切って、別々の内容を表示(ゾーン) |
| 連携アプリ | 天気・カレンダー・ニュース・Canva・SNS・SharePoint など |
| ダッシュボード表示 | Power BI・Tableau など(Pro プラン) |
| 緊急のお知らせ | 全画面への一斉表示(Pro プラン) |
| オフライン再生 | 端末に保存して、ネットが切れても表示を続ける |
| 管理 | タグ・場所・役割で画面と担当者を整理。スマホのブラウザからも操作可 |
アプリの一覧ページには24個のアプリが並んでいます。一方で、Google ドライブ・Google スライド・YouTube・Power BI などの「組み込み連携」には「近日公開」の表示もあり、FAQ の説明と食い違う部分がありました。使いたい連携がある場合は、無料お試しの間に実際に動くか確かめるのがおすすめです。
管理画面は英語です。ただしヘルプ記事によると、ニュースなど一部のウィジェットは、画面のグループごとに言語を「日本語」に設定できます。管理画面そのものを日本語にできるという記載は、公式サイトでは確認できませんでした。
対応端末
公式サイトで確認できた対応端末は次のとおりです。
| 端末 | 対応 | メモ |
|---|---|---|
| Apple TV | ◎ | App Store からアプリを入れる。4K モデル推奨 |
| Mac mini | ◎ | ブラウザでの再生も可能 |
| iPad(iOS) | ◎ | App Store から |
| Fire TV | ◎ | |
| Android / Android TV | ◎ | Google Play などから |
| Samsung 業務用(Tizen) | ◎ | ディスプレイにアプリを入れる。外付け端末不要 |
| LG 業務用(webOS) | ◎ | 同上 |
| BrightSign | ◎ | |
| ChromeOS | ◎ | |
| Windows・Linux | △ | ブラウザで表示。専用アプリは対応予定 |
| Raspberry Pi | — | 対応予定(2026年10月時点) |
◎=対応、△=ブラウザで表示、—=未対応
Kitcast は自社の専用プレーヤーを売っていません。Apple TV など市販の端末をそのまま使う考え方です。
料金とプラン
料金は1画面ごとの月額で、米ドルで支払います。年払いにすると安くなります。
| プラン | 年払い(1画面・月) | 月払い(1画面・月) | 円の目安(年払い) |
|---|---|---|---|
| Starter | $7 | $9 | 約1,050円 |
| Pro | $10 | $14 | 約1,500円 |
| Enterprise | 個別見積もり | 個別見積もり | — |
※1ドル=約150円で計算。クレジットカード払いの場合、カード会社の海外利用手数料が別にかかることがあります。
- Starter:画像・動画・PDF の表示、プレイリストとスケジュール、テンプレート、基本のアプリ、画面の分割、容量無制限
- Pro:Starter の内容に加えて、細かい権限設定、ダッシュボード表示、Webページとライブ配信、SAML の SSO、Microsoft 365・Google Workspace 連携、緊急のお知らせ、監視とアラート、API、MDM 連携、監査ログ
- Enterprise:専任の担当者、優先サポート、大規模導入の支援、ホワイトラベルなど
無料お試しは14日間で、Pro の機能を全部使え、クレジットカードは不要と書かれています。また 30日間の返金保証もあります。教育機関・非営利団体向けの割引や、50画面以上のボリューム割引も案内されています(金額は問い合わせ)。
注意点として、ユーザー数については「Starter でもユーザー無制限」とする FAQ と、Starter では対象外とする比較表があり、公式サイトの中で記載が食い違っていました。複数人で運用するなら、Pro を前提に考えておくと安心です。
再生機の費用は別にかかります。公式サイトでは Apple TV を $199〜$249、Fire TV Stick を $39 程度と紹介しています(米国価格)。日本で買う場合は国内の販売価格を確認してください。
向いている人・向いていない人
向いている人
- Apple TV・Mac mini・iPad でサイネージをしたい
- 会社や学校で、Jamf などの MDM を使って Apple 製品を管理している
- 会議室や教室で、サイネージと AirPlay の画面共有を1台でこなしたい
- テンプレートや Canva を使って、手軽に見栄えのよい画面を作りたい
- 英語の管理画面でも気にならない
向いていない人
- 管理画面は日本語でないと困る(→ EasySignage や Yodeck が候補)
- 円で支払いたい(Kitcast は米ドル払い)
- Windows のパソコンや Raspberry Pi を再生機にしたい
- タッチパネルで操作する案内板(キオスク)を作りたい
- とにかく無料で使い続けたい(無料プランは料金表にありません)
始め方(申し込みから表示までの流れ)
公式サイトの説明をもとに、Apple TV で始める場合の流れをまとめます。
- アカウントを作る:Kitcast の公式サイトから無料お試しに申し込みます(カード不要)。
- Apple TV をつなぐ:Apple TV をテレビやディスプレイに HDMI でつなぎ、Wi-Fi か有線LANでネットにつなぎます。
- アプリを入れる:Apple TV の App Store で「Kitcast」を探してインストールします。
- ペアリングする:アプリを開くと画面にコードが出るので、パソコンの管理画面に入力して画面を登録します。公式サイトでは「5分以内」でできると説明しています。
- 中身を作る:テンプレートや画像・動画でプレイリストを作り、スケジュールを決めて画面に割り当てます。
- 台数が多いときは MDM:Pro プランで MDM と Apple Business Manager を設定すると、次からは Apple TV をつなぐだけで自動で準備されます。
お試し期間に、日本語の文字がきれいに表示されるか、使いたい連携アプリが動くかを、実際の画面で確かめておくと安心です。
まとめ
Kitcast は、Apple TV を中心にサイネージを組みたい人のためのCMSです。2015年から Apple TV に取り組んできた実績、MDM による一括設定、AirPlay と両立できる使い方は、ほかのCMSにはあまりない強みです。
一方で、管理画面は英語、支払いは米ドル、Windows・Raspberry Pi の専用アプリはまだない、という点は日本の小さなお店にとってハードルになるかもしれません。**「Apple 製品で統一したいかどうか」**が、Kitcast を選ぶかどうかの一番の分かれ目です。
(2026年10月時点、公式サイトの情報をもとに編集部がまとめました)
5社をくらべたいときは注目のサイネージCMS 5社の比較表を見てください。
Kitcast の対応端末や料金の一覧は、Kitcast のCMS詳細ページにもまとめています。
